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 幻日環

別名

英名

氷晶

配向

​ 

レア度

 

parhelic circle 

様々な氷晶

主にプレート配向

稀にカラム、パリー配向等

★★★★☆☆☆☆

3~10回/年

概説

●幻日環とは

 見た目は光源と同じ高度で、地平線と平行に天球を一周する白い輪である。幻日環は反射でのみ形成される現象であり色づくことはない(光路が内部反射の場合、氷晶内に光が入射する際に屈折が起きるが、出射時にも起きる屈折で相殺され正味の屈折が無くなる)。ただし、光源高度32°まで臨界角効果により形成されるルースポットという青色の部分が(光源高度0°では光源から方位角±116°、光源高度32°では光源から方位角180°=向日点に)出現する。また、回折により赤みがかることもあるという。[1]

 稀な現象であり、多くの統計では年に3~10回しか出現しないとされている。[2] ちなみに幻日環は出現しても部分的であることが多く、全周の幻日環となると年に1回あるかないか、というほど希少である。更に、全周幻日環の中でも光源高度が低いものほど希少性が高まる。

​ また、幻日環上には様々な現象(22°幻日120°幻日Liljequist幻日ブルースポット、向日)が付随して起きることがあるため是非注目してほしい。カラム・パリー配向での幻日環では22°幻日や120°幻日等は起きないため、そこに着目することで幻日環の配向傾向の把握の一助にもなり得る。

 非常に明るい22°幻日や環天頂・環水平アーク、タンジェントアーク(外接ハロ)、パリーアークがあるときに幻日環は出現しやすく、また非常に明るい幻日環があるときは更にレアな太陽アーク映日アーク・向日アーク(ウェーゲナーヘースティングストリッカーグリーンラートランクル)対日アークが近い内に出現する可能性が高いので注視すべきである。

​ 

 たまに幻日の尾と幻日環の区別が難しいことがある。光源高度にもよるが、尾が視角約22°以上伸びている場合、もしくは22°ハロの内側にも伸びている場合幻日環である可能性が高い。[3]

●原理

 地面に対し垂直の氷晶面に反射、内部反射することで生まれる。原理を簡単に理解するには、ビルの壁や窓に太陽が反射して、同じ高さに光の帯が伸びるのを想像すると分かりやすいだろう。しかし、実際にはそれ以外の様々な光路も複雑に混ざり合っており、更に光源高度によって変化する。

PHC light path.png

 プレート配向による幻日環の光路をより細かく解説する。「光源と22°幻日との間の部分」は「外部反射の光路」が主だが、「22°幻日より外側の部分」は、実は外部反射はあまり寄与せず「1-3-2」等の光路によって作り出される。[4][5]

 また、以下の図は氷晶の形状や光源高度、配向による幻日環の強度分布を表し、様々なパラメータが幻日環に影響を及ぼしていることが分かる。

4-Figure3-1.png

 「Intensity distribution of the parhelic circle and embedded parhelia at zero solar elevation: theory and experiments.」の図3より引用。幻日環の強度分布の図で、縦軸が強度、横軸が方位角(中央が0°、端が180°)、灰色の線がプレート配向、青色がカラム配向、赤色がパリ―配向である。左側が表面反射のみ、右側が全ての光路、光源高度は(a)(b)で1°、(c)(d)で20°。(a)(c)は氷晶のアスペクト比2、(b)(d)は0.3である。[4]

●変形・出現光源高度

​ 氷晶の揺れが大きいほど幅が太くなり、およそstd 3°ほどでぼやけて見えなくなってしまう

​ 光源高度に関わらず出現するが、光源高度が低いほど大きくなり、高いほど小さくなる。幻日環の直径は

[幻日環の直径視角(°)] = 2 × (90 - [光源高度(°)])

でざっくりと計算できるので参考にしてほしい。例えば、光源高度0°では幻日環の直径は視角180°(地平線と同じ)となる。光源高度68°では直径視角44°(22°ハロと同じ大きさ)、光源高度79°では直径22°(22°ハロの半分の直径で、ちょうど内接円になる)となる。

[1]Parhelic Circle Paraselene

 

[2]日本気象学会機関紙「天気」64巻(2017年)、鵜山義晃氏の「大気光学現象の出現頻度」によれば、太陽光では年3.6回、月光では年0回とされている。

​ 以下、他の有志の方々による統計

年5-10回 Arbeitskreis Meteore e.V.

年数回 空の輝き

年4.3回 雪結晶・人工雪と過冷却水の実験

年4-5回 科学する空

 

[3]Nebensonnen (EE02/03) Arbeitskreis Meteore e.V.

G. Berthold, Chemnitzによれば、幻日の尾は光源高度0°で最長の21.5°になるという。

[4]

「Intensity distribution of the parhelic circle and embedded parhelia at zero solar elevation: theory and experiments.」 Sarah Borchardt, M. Selmke 2014

[5]

Atmospheric Halos, Antarctic Re search Series」 W. Tape

他の形態

●幻月環

 月で起きる幻日環のこと。言うまでもなく通常の幻日環よりも希少性が高い。

⇒ Moonlight Lowitz Arcs

Atmospheric Optics

幻月環、120°幻月、他様々な月光のハロ

⇒ Lunar Halos

Atmospheric Optics

幻月環、120°幻月、他様々な月光のハロ

⇒ Lunar Halos Alaska North Slope

Atmospheric Optics

幻月環、120°幻月、他様々な月光のハロ

⇒ Lunar halos, Finland

Atmospheric Optics

月暈、幻月環、月光のローウィッツアーク、他様々な月光のハロ

⇒ Grate Moon Halo Display

Atmospheric Optics

​カラム配向の幻月環、外接ハロ、ラテラルアーク、ウェゲナーアーク。

●グラウンド(サーフェス)ハロの幻日環、拡散光の幻日環

グラウンド(サーフェス)ハロの幻日環

地面や車の窓ガラス等の平面に浮かび上がる幻日環。

拡散光の幻日環

点光源によって作られる、観測者・光源・氷晶の位置関係で大きく形を変える幻日環。

⇒ Complex Windshield Display

Atmospheric optics, landscapes ,and more

​グラウンドハロ、拡散光の幻日環、その他さまざまなグラウンドハロ、拡散光のハロ

⇒ Pintahalo - 29.1.2012 klo 23.00 Espoo

Taivaanvahti

グラウンドハロ、拡散光の幻日環、その他さまざまなグラウンドハロ、拡散光のハロ

⇒ Streelight parhelic circle on video

Halo Phenomena

拡散光の幻日環

●タンジェントアークの幻日環

​ 多重散乱のハロの一種であり、タンジェントアークの光が作り出す幻日環である。

​⇒詳しくはこちら

●環天頂アークの幻日環

​ 多重散乱のハロの一種であり、環天頂アークの光が作り出す幻日環である。カーンアークの補助光路の一つとして理論上考えられている。

​⇒詳しくはこちら

観測例

⇒ Peru Rainforest Halos

Atmospheric Optics

​太陽高度が高いときの幻日環。22°ハロより小さい。

⇒ High sun parhelic circle

Ice Crystal Halos

​太陽高度が高いときの幻日環。22°ハロの内接円となっている。

⇒ Parhelic Circle

Atmospheric Optics

太陽高度が比較的低いときの幻日環。

⇒ Toronto Halos

Atmospheric Optics

幻日環と120°幻日、ブルースポット等。パノラマ合成で幻日環を一直線に撮影。

⇒ Rare Arcs at High Sun

Atmospheric Optics

カラム、パリー配向による幻日環。外接ハロ、パリーアーク、ウェゲナーアークも出現している。

⇒ Swiss Halos

Atmospheric Optics

交差する上下ラテラルアークを貫く幻日環。

外部解説リンク

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