トランクルのディフューズアーク

　トランクルのディフューズアーク

別名

英名

氷晶　　

配向

レア度

トランクルの向日アーク

ディフューズアークB

Tränkle's anthelic arc

diffuse arc B

六角柱状氷晶

カラム配向

★★★★★★☆☆

数年に1回

光路の一例

1/1

概説

●トランクルのディフューズアークとは

　見た目は向日点及び対日点で交差する、白色で細いX字の弧。光が淡く拡散したような見た目からディフューズ（拡散）アークと呼ばれる。ディフューズアークはこのトランクルアークに加えグリーンラーアークの2種（＋α）で構成されており、基本的に常に同時に出現するが、自然光源でそれらを区別するのは難しい。出現しても非常に薄いことが多いため、疑わしい際は何枚も写真を撮りスタック処理して浮かび上がらせよう。

　トランクルアークとグリーンラーアークはどちらも向日点でクロスする弧だが、後者と比較して前者は拡散範囲が狭く、弧の長さは長く、外側に位置する。また、氷晶の三角傾向が強まるとトランクルアークが支配的になる一方、グリーンラーアークは薄くなる。更にグリーンラーアークは光源高度約30°以上では見えなくなるが、トランクルアークはそれ以上でも向日点で交差する点も違いである。

　トランクルのディフューズアークが起きているとき、氷晶は非常に揺れの少ない理想的なカラム配向となっていることが予想されるため、適切な環境であれば確実に明るい幻日環、タンジェントアーク、ラテラルアーク、パリーアーク、テープアーク、太陽アーク・映日アーク・他の向日アーク(ウェゲナー、トリッカー、グリーンラー)・対日アークといった現象を伴うだろう。

　同伴しやすい現象の中でも、向日アークの一つであるトリッカーアークは出現位置がディフューズアークと重なっているため混同されやすい。

●歴史

　グリーンラーとトランクルのディフューズアークの現在最初の記録とされているものは1920年フィンランドにて観測された所謂クーサンコスキディスプレイである。

　E. Tränkle、R. Greenlerがこれらの弧の説明をした。

●出現頻度

　とても稀にしか観測されず、自然光の場合数年に1回程しか出現しないとされている。[1]

　希少な理由として、トランクルのディフューズアークは氷晶に揺れが少しあるだけで容易に不鮮明になってしまうほどデリケートな現象であり、揺れの極めて少ないカラム氷晶が広範囲に存在しなくてはならないというシビアな条件が必要なことが挙げられる。また、トランクルのディフューズアークは薄いうえにほぼ白色であり、雲等の影響で白っぽくなった空では判別が困難で見落としてしまうことも一因だろう。

　ダイヤモンドダスト中では比較的頻繁に出現する。

●原理

　六角柱状氷晶がc軸を水平にし、c軸・鉛直軸を中心に回転しているとき、(1例)六角柱状氷晶の側面に入射し、1つ飛ばした側面で反射、間で底面に反射し、更に1つ飛ばした側面から光が射出することで生まれる。「側面→1つ飛ばした側面→更に1つ飛ばした側面」という光路から、六角柱状氷晶が三角形傾向になるほどトランクルのディフューズアークが支配的に出現するようになることが分かるだろう。

●変形・出現光源高度

　光源高度約40°でほぼ見えなくなる。

　光源高度0°ではX字だが、トランクルアークは向日点と対日点を交差する特徴があるため、光源高度があがるにつれシャネルのロゴマークのような形状となる。

[1]　Taivaanvahti