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 環天頂アーク

別名

 

英名

 

 

氷晶

配向

レア度

環天頂弧、天頂環、逆さ虹

別上部46°プレートアーク

circumzenithal arc 

upper 46° plate arc

upside-down rainbow

六角板状氷晶、六角柱状氷晶

プレート配向、パリー配向

★★★☆☆☆☆☆

10~40回/年

概説

●環天頂アークとは

 見た目は太陽から視角45~58°上に現れる、天頂を108-120°囲む虹色の弧(内側が赤、外側が紫)である。高い出現頻度と鮮やかさから有名かつ人気な大気光学現象であり、しばしば「逆さ虹」としてメディアに取り上げられる。環水平アークの対の現象であり、「環天頂アークと環水平アーク」の関係性は「右幻日と左幻日」「上部タンジェントアークと下部タンジェントアーク」と同様である

 比較的頻繁に観測でき、統計では年に10~40回出現するとされている[1]。

 氷晶が22°幻日を作り出す姿勢・パリーアークを作り出す姿勢のときに環天頂アークも現れやすいので、幻日パリーアークが出現した際は直上を観測すべきである。

 また、多くの現象図では分かりやすさのために46°ハロの上下に環天頂アークと環水平アークを描いているが2つの現象が(同じ平行光光源で)同時に出現することは物理的にあり得ない

 

 環天頂アークと46°ハロは光源高度15-27°のときに接する。ちなみに環天頂アークと上部ラテラルアークは光源高度に関わらず常に接する。そして、環天頂アークと上部ラテラルアークが同時に現れたとき、「2叉に分かれた鮮やかな弧」が天頂近くに現れるという特徴的な景観を作り出す

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●原理

 六角板状氷晶がc軸を垂直に回転しているとき、氷晶の上底面と側面とで形成される90°プリズムに光が通ることで生まれる。

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 氷で出来た90°プリズムを光が通過すると約46°曲がる光が多い(「最小偏角が46°」という)ため光源から46°近く上に現れるとざっくり考えて良い。

Q. どうして出現位置が必ずしも視角46°じゃないの

​A. 光源の高さが光路に影響を与えるから

 説明を簡略化するため光路を”現象の真ん中”の部分に限るとします。

 氷晶の回転方向(プレート配向では水平方向)と光源位置の変動方向(鉛直方向)が一致しないため、光源位置の変動は直接的に「光がプリズムへ入射する方向」の変化となり、それに伴って屈折・射出角が変化=現位置が変化します。そのため最小離角が46°となるだけで、出現位置が46°に固定されるわけではありません

 一方で氷晶の回転方向と光源位置の変動方向が一致している場合、光源と氷晶の相対的な位置関係は変化しない=「光がプリズムへ入射する方向」は変化しないため、出現位置が変化しません

 一致している例としてはランダム配向の現象カラム配向の60°プリズムの現象等で、22°ハロ46°ハロタンジェントアーク等であり、どれも光源位置が変化しても出現位置が変化しません。ただしタンジェントアーク真ん中の部分以外は、氷晶の鉛直軸回転が関与するため「光源位置の変動」に影響され、出現位置が変化=形状変化してしまいます

 また、可視光の内で赤色の光の最小偏角が最小・紫色の光が最大であることから環天頂アークは内側が赤色・外側が紫と見えるのである。

 幻日・タンジェントアーク・22°ハロ・46°ハロといった現象はプリズムが分光を起こす方向と氷晶の回転方向が一致するため、分光した光が混じりあってしまい彩度が弱い見た目(最小偏角部分が赤色に色づくだけで他の部分は白っぽい)となる。一方で環天頂アークや環水平アークの場合、プリズムが分光を起こす方向と氷晶の回転方向が一致しないため非常に鮮やかとなるである。(同じことがラテラルアークやパリーアーク、パリーラテラルアーク等にも言える。これらの現象の分光方向と氷晶回転方向を是非考えてみてほしい。)

●変形・出現光源高度

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光源高度32°超では氷晶内で光が全反射するため、それより低くないと環天頂アークは出現しない。

​ 光源高度32°以下で観測され、22°の時に最も明るくな(32°超でも揺れ角を考慮すると出現することもある)。光源高度が低いときは細くなり、天頂を方位角約108°まで囲む。光源高度が高いときは太くなり、天頂を方位角約120°まで囲む。

​ ゆれが強いと環天頂アークはぼやけ、その下に46°ハロの上部一部分が出現する。

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[1]日本気象学会機関紙「天気」64巻(2017年)、鵜山義晃氏の「大気光学現象の出現頻度」によれば、太陽光では年8.1回、月光では年0.1回とされている。

​ 以下、他の有志の方々による統計

年20-30回 Arbeitskreis Meteore e.V.

年40回 空の輝き

年22.8回 雪結晶・人工雪と過冷却水の実験

年14回 科学する空

 幻日と同様、季節に関わらず安定して現れる傾向がある。

他の形態

●月の環天頂アーク

 月の光で起きる環天頂アークはとても貴重である。肉眼ではほぼ白色にしか見えないことが多い。

⇒ Moon Halos

Atmospheric Optics

幻月、月のタンジェントアーク、月の環天頂アーク

⇒ Lunar Circumzenithal Arc

Atmospheric Optics

月の環天頂アーク

⇒ Moon Halo Displays, Poland

Atmospheric Optics

​月の環天頂アークと様々な月のハロ

●グラウンド(サーフェス)ハロの環天頂アーク、拡散光の環天頂アーク

グラウンド(サーフェス)ハロの環天頂アーク

地面や車の窓ガラス等の平面に浮かび上がる環天頂アーク。

拡散光の環天頂アーク

点光源によって作られる、観測者・光源・氷晶の位置関係で大きく形を変える環天頂アーク。

⇒ Pintahalo - 29.1.2012 klo 23.00 Espoo

Taivaanvahti

拡散光のグラウンド環天頂アークと様々なグラウンドハロ

⇒ 2010_01_26-27 Complex Windshield Display

Atmospheric optics, landscapes and more (Jari Luomanen's site)

拡散光のグラウンド環天頂アークと様々なグラウンドハロ。この写真での観測者・光源・氷晶の位置関係では、環天頂アークは光源の下に出現している。

●太陽柱の環天頂アーク

​ ヘンリクソンアークとも呼ばれる。通常の環天頂アークの少し下に現れて、あたかも2重の環天頂アークに見える。多重散乱のハロの一種であり、その正体は非常に明瞭な上部太陽柱の光が作り出す連続的な環天頂アーク、及び下部太陽柱の光が作り出す連続的な環天底アークの重ね合わせである。

​⇒詳しくはこちら

●幻日、120°幻日、幻日環の環天頂アーク

​ 多重散乱のハロの一種であり、幻日、120°幻日、幻日環の光が作り出す環天頂アークである。カーンアークの補助光路の一つとして理論上考えられている。

​⇒詳しくはこちら

●ジェンセンアーク

​ 詳細不明の2~3重の環天頂アーク。

​⇒詳しくはこちら

外部解説リンク

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