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upper vex Parry top.png

 パリーアーク

別名

英名

氷晶

配向

レア度

22°パリーアーク

Parry arc,22° Parry arc 

六角柱状氷晶

パリー配向

★★★★☆☆☆☆

​1~5回/年

概説

●パリーアークとは

 見た目光源の上下視角22°近くに現れる虹色の色の弧である。上の弧を上部パリーアーク、下の弧を下部パリーアークと呼び、それぞれ光源に凸の弧である凸型、凹の弧である凹型が存在するため、2×2で合計4種類になる。

 一般的に、上・下部凸型は上・下部タンジェントアークの少し外側の視角に、似た形状のひと回り小さい弧として現れ2重の弧の見た目として観察されることが多い。上部凹型上部タンジェントアーク蓋をするような見た目として、下部凹型は22°ハロや外接ハロよりひと回り大きな円​弧として観察されることが多い。

 稀にしか観測できず、統計では年に1~5回程度しか出現しないとされる。[1] 4種の中では上部凹型が出現しやすい​。

 

パリ―アークの形態の名前について、太陽に凸ならサンベックス型、凹ならサンケーブ型と呼ばれることがあります。しかし、この名前では光源が太陽に限られてしまうため(光源が月ならムーンベックス型、ムーンケーブ型となる)、このサイトでは普遍的表現として凸型凹型としています。

 パリーアークの姿勢の氷晶=パリー氷晶(c軸水平かつ2つの六角柱側面を水平に固定している氷晶)は空気中で非常に不安定なものである。タンジェントアークの姿勢の氷晶=カラム氷晶(c軸水平の氷晶)が良質かつ豊富で気流も安定している時、一部の氷晶の姿勢に更なる制約が加わることでパリー氷晶が初めて生まれると考えられている制約が加わる一因に氷晶の形状も関与しているとも考えられており、正六角柱ではなく、1対の側面が長い扁平な六角柱や不等辺六角柱だとなりやすいとされている。[2]

 よってパリーアークはタンジェントアークと(特殊な例外を除き)必ずセットで出現すると考えて良い(逆にタンジェントアークはパリーアーク抜きで単独に出現出来る)。また、上記からパリーアークはタンジェントアークの1要素とも考えられ、カラム氷晶の光点の投射領域と重なることになる。

 パリーアークを作るときの氷晶の姿勢ではパリーラテラルアーク(テープアーク)も現れることがあるので、より外側(光源から視角46°付近の領域)にも注目すべきである。そして上述の通り明るいカラム配向の現象(タンジェントアーク、ラテラルアークなど)も基本的には必ず同時に出現する。

 また、明るいパリーアークが現れた場合は、幻日環太陽アーク映日アーク対日アークヘースティングスアーク等といったよりレアな現象も出現する可能性が高い。

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​●上部タンジェントアークと上部パリーアークの区別

 22°ハロの上に接する弧が出現したとき、形状だけを考えれば上部タンジェントアークとパリーアークの判別は困難だが、上記のようにパリーアークは単独で出現しないと考えられるため、弧が単独で出現しているならば、それはパリーアークではなくタンジェントアークと基本的に断定して問題ない(例外もある)。

左図の様に、22°ハロの上に単独で弧が出現したときは基本的にタンジェントアークを考える。

右図2つの様に、22°ハロの上に2つの弧が出現したときに初めて、2つ目の弧をパリーアークと考える。

⇒ A pure bleed uppervex Hastings

​The Halo Vault

例外的な、カラム配向の無い純粋なパリー配向のディスプレイ

 

●歴史

 William Edward Parryが1820年4月8日にカナダ北極圏のメルビル島沖で初めて記録したことからパリーアークと名付けられた。尚、記録したものは上部凹型パリーアークのみであったが、同じメカニズムである他3種もまとめてパリーアークとし、そのアークを形成する氷晶の配向をパリー配向と呼ぶようになった。[3

●原理

 六角柱状氷晶がc軸を水平にして、六角柱側面を水平にし、鉛直軸を中心に回転しているとき、氷晶の側面と一つ飛ばした側面とで形成される60°プリズムに光が通ることで生まれる。のような制限下では「側面と一つ飛ばした側面を通過する光路」は4種類存在し、それぞれが4種のパリーアークに対応することとなる。

Parry light pass ex.png

パリー配向時、六角柱氷晶は一対の側面が水平で固定される(上図の赤い部分)。このような状況で60°プリズムを作る光路は4種類存在する。

橙:上部凹型 黄:上部凸型 青:下部凹型 水:下部凸型

 また色の波長によって屈折率がわずかに異なり(=最小偏角も異なり)、可視光の内で赤色の光の最小偏角が最小の21.7°であることから、パリーアークは内側が赤色に見えるのである。また、プリズムが分光させる方向と氷晶の回転方向が一致しないため、分光した光は混じり合わず彩度は高い。

●変形・出現光源高度

​ 出現光源高度にそれぞれ制限があり、1つの平行光光源で4種全てが同時に出現することは無い。

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上部凹型パリーアーク

光源高度数°~約80°まで出現する。なだらかな山型で、約40°までは光源高度があがるにつれ下降し光源に近づき、約40~60°まで22°ハロと接触、それ以降は上方へフェードアウトする。

​上部凸型パリーアーク

光源高度0~約20°まで出現する。上部タンジェントアークより鋭いV字のまま、光源高度があがるにつれ上方へフェードアウトする。

下部凹型パリーアーク

光源高度約20数°~90°まで出現する。約20~45°までは光源の左右下方に2つの弧として出現、約45°で左右が繋がり、上昇して22°ハロ下部と接触する。約65°程で22°ハロ下部と接した一回り大きい楕円となり、90°近くでは22°ハロから離れ一回り大きい同心円となる。

​下部凸型パリーアーク

光源高度約20数~60°まで出現する。下部タンジェントアークより鋭いΛ字で、光源高度があがるにつれ弧を開きながら下方へフェードアウトする。

 

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左:タンジェントアーク 中:パリーアーク 右:両方 光源高度0-90° 10°刻み

[1]日本気象学会機関紙「天気」64巻(2017年)、鵜山義晃氏の「大気光学現象の出現頻度」によれば、太陽光では年0.7回、月光では年0回とされている。

​ 以下、他の有志の方々による統計

年2-6回 Arbeitskreis Meteore e.V.

年1回程度 空の輝き

年1.7回(外接ハロは年3.9回) 雪結晶・人工雪と過冷却水の実験

年1回以下 科学する空

[2]「Notes and correspondence Origin of the Parry arc」 C. D. Westbrook

[3Parry Halo Display 1820

他の形態

●月のパリーアーク

 月の光で起きるパリーアークのことで極めて稀である。たいてい肉眼ではぼんやりと白っぽく見える。

⇒ Lunar Halos Alaska North Slope

Atmospheric Optics

上部凹型パリーアークと様々な月のハロ

⇒ Two Rare Lunar Halos

Atmospheric Optics

上部凹型パリーアークと様々な月のハロ

⇒ Greenland Ice Cap Lunar Halos

Atmospheric Optics

上部凹型パリーアークと様々な月のハロ

⇒ Lunar halo complex in Sotkamo, Finland

The Halo Vault

上部凹型パリアークと様々な月のハロ

⇒ Parry and Flared Pillers

Atmospheric Optics

下部凸型パリーアークと下部タンジェントアーク、ライトピラー

⇒ High Moon Parry Arcs

Atmospheric Optics

上部凹型、下部凹型パリーアークと様々な月のハロ

⇒ Rare moon ice halos Sweden

Atmospheric Optics

上部凹型、下部凹型、下部凸型パリーアークと様々な月のハロ

⇒ Halo phenomena covering the sky - 10.12.2019 at 21.30 - 10.12.2019 at 21.45 Vimpeli

Taivaanvahti

外接ハロと様々な月のハロ

上部凹型​、下部凹型、下部凸型パリーアークと様々な月のハロ

●反射型下部凸型パリーアーク

 モイラネンアークに似ているがシミュレーションで一致しない不明なアークが度々観測され、それを説明するために予想されたものが、反射型下部凸型パリーアークである。Riikonen arcとも呼ばれている。原理として、一対の側面が広く、平べったい六角柱状氷晶があるとき、通常の下部凸型パリーアークの光路の間に反射を含むことで発生するとされる。

 *しかしそのアークを説明できる候補として射上部タンジェントアーク(水面などで反射された光源によって形成された上部タンジェントアーク)が新たに挙げられている。反射上部タンジェントアークとは、弧の角度が少し狭い、弧の中の光量が少ない、といった違いがある。

⇒ New Halo by Marko Riikonen

​Atmospheric Optics

​反射型下部凸型パリ―アークの仮説。

⇒ A Swedish display points to a new halo

​The Halo Vault

​反射上部タンジェントアークについての考察。

​観測例

⇒ Parry & Upper Tangent Arcs

Atmospheric Optics

上部凸型パリーアーク

⇒ Parry Kaleidoscope

Atmospheric Optics

上部凸型パリーアーク

⇒ Swedish Ice Halos, Moilanen Arc

Atmospheric Optics

上部凸型パリーアーク

⇒ 4 out of 5

Atmospheric Optics

上部凹型リーアーク

⇒ Parry Arc

Atmospheric Optics

上部凹型リーアーク

⇒ Parry arcs

Atmospheric Optics

上部凹型リーアーク

⇒ Georgia USA Halos

Atmospheric Optics

上部凹型リーアーク

⇒ Eye in the Sky

Atmospheric Optics

上部凹型リーアーク

⇒ Parry Arc II

Atmospheric Optics

上部凸型、上部凹型リーアーク

⇒ Halos at Whistler, Canada

Atmospheric Optics

上部凸型、上部凹型リーーク

⇒ Spain Diamond Dust Halos

Atmospheric Optics

下部凸型パリーアーク

⇒ Lower Parry arc over Finland

Atmospheric Optics

下部凸型パリーアーク

⇒ Texas rare high sun halos

Atmospheric Optics

下部凹型パリーアーク

⇒ Parry Arc at High Sun

Atmospheric Optics

上部凹型、下部凹型パリーアーク

⇒ BC Lower Parry Arc

Atmospheric Optics

上部凹型、下部凹型パリーアーク

⇒ Aerial Rare Halos, China

Atmospheric Optics

上部凹型、下部凹型、下部凸型パリ―アーク

外部解説リンク

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