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 環水平アーク

別名

 

英名

 

 

氷晶

配向

レア度

環水平弧、水平環、水平虹

下部46°プレートアーク

circumhorizon arc

circumhorizontal arc

lower 46° plate arc

六角板状氷晶、六角柱状氷晶

プレート配向、パリー配向

★★★☆☆☆☆☆

5~20回/年

概説

●環水平アークとは

 見た目は光源から視角46~58°下に現れる、天頂を108~120°囲む虹色の弧(内側が赤、外側が紫)で、光源高度68°で最も明るくなる。太さは最大で約4°になる。環天頂アークの対の現象であり、「環天頂アークと環水平アーク」の関係性は「右幻日と左幻日」「上部タンジェントアークと下部タンジェントアーク」と同様である

 高い出現頻度と鮮やかさから有名かつ人気な大気光学現象で、しばしば「水平虹」としてメディアに取り上げられる。

 光源高度が約58°以上でないと出現しない。日本において太陽の南中高度が58°以上になるのは3月下旬から9月中旬であるため、太陽の環水平アークは主に夏にしか観測出来ない。一方で月は”満月に限定”すると冬に高度が高くなることから、月の環水平アークを見るなら真逆の冬がチャンスになる

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光源高度57.8°以下では氷晶内で光が全反射するため、それより高くないと環水平アークは出現しない。

 

●頻度

 比較的頻繁に観測でき、統計では年に5~20回出現するとされている[1]。

●原理

 六角板状氷晶がc軸を垂直に回転しているとき、氷晶の側面と下底面とで形成される90°プリズムに光が通ることで生まれる。

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 氷で出来た90°プリズムを光が通過すると約46°曲がる光が多い(最小偏角が46°)ため太陽から最小離角46°下に現れるとざっくり考えて良い。また、可視光の内で赤色の光の最小偏角が最小・紫色の光が最大であることから環水平アークは内側が赤色・外側が紫と見えるのである。

 幻日・タンジェントアーク・22°ハロ・46°ハロといった現象はプリズムが分光を起こす方向と氷晶の回転方向が一致するため、分光した光が混じりあってしまい彩度が弱い見た目(最小偏角部分が赤色に色づくだけで他の部分は白っぽい)となる。一方で環天頂アークや環水平アークの場合、プリズムが分光を起こす方向と氷晶の回転方向が一致しないため非常に鮮やかとなるのである。

●変形・出現光源高度

​ 光源高度約58°以上で観測される。光源高度が低いときは太くなり、天頂を方位角約108°まで囲む。光源高度が高いときは細くなり、天頂を方位角約120°まで囲む。

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●他の現象との関係性

 環水平アークは46°ハロとは光源高度63~75°のときに接し、下部ラテラルアーとは(環水平アークが出現可能な範囲において)光源高度に関わらず常にする

 光源高度が高い時は環水平アークと下部ラテラルアークは非常に似た形状になるため、混同されることが多い。外接ハロ(タンジェントアーク)が明瞭なときや、見かけの曲率が強ければ環水平アークではなく下部ラテラルアークの可能性が高い。ただし中心の一部分しか出現していない場合は区別することが出来ない(環水平アークと下部ラテラルアークが重複して出現しているということも考えうる)。そういった状況では判別に固執する必要は無く、「環水平アーク」として差支えはないだろう。

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環水平アークと下部ラテラルアークの見かけの曲率の差

⇒ Infralateral & Circumhorizon Arcs

Atmospheric Optics

環水平アークと下部ラテラルアーク。曲率の差が分かる。

●注意点

〇名称の注意点

 小さな巻層雲や穴あき雲に発生した、一部分しか見えない環水平アークは「虹色の雲」として認識されることから彩雲と頻繁に間違えられる。環水平アークの発色は屈折によるものであり、色の順が規則正しく、雲が流れても色の位置は固定されている。彩雲の発色は主に回折によるものであり、色は淡くまばらで不規則、雲の流れと供に移動し色も変化していく。

 また、「虹色の雲」の燃え盛っているような極彩色の見た目から俗称「ファイアーレインボー」と紹介されることもある。「ファイアーレインボー」という言葉は2006年頃に海外のとあるメディアによって造られた言葉とされ、現在では彩雲や極成層圏雲を指すこともあり定義が曖昧である。受け取り側の誤解を避けるためにもあまり使用すべきではない。

〇現象図の注意点

 多くの現象図では分かりやすさのために46°ハロの上下に環天頂アークと環水平アークを描いているが、2つの現象が(同じ平行光光源で)同時に出現することは物理的にあり得ない

 同時に出現させたい場合は、ダイヤモンドダスト中に高度の異なる光源を2つ用意するか、拡散光の光源を用いて、観測者と氷晶の位置関係を調整しよう。

[1]日本気象学会機関紙「天気」64巻(2017年)、鵜山義晃氏の「大気光学現象の出現頻度」によれば、太陽光では年5.1回、月光では年0回とされている。

​ 以下、他の有志の方々による統計

年20回 空の輝き

年15.0回 雪結晶・人工雪と過冷却水の実験

年10回 科学する空

関連

●月の環水平アーク

 月の光で起きる環水平アークはとても貴重であるが、肉眼ではほぼ白色にしか見えないことが多い。太陽の環水平アークのシーズンが夏である一方、月の環水平アークは冬がシーズンとなる。

⇒ Lunar Circumhorizon Arc

Atmospheric Optics

月の環水平アーク

⇒ Moonlight Circumhorizon Arc

Atmospheric Optics

月の環水平アーク、下部ラテラルアーク?

●グラウンド(サーフェス)ハロの環水平アーク、拡散光の環水平アーク

グラウンド(サーフェス)ハロの環水平アーク

地面や車の窓ガラスに浮かび上がる環水平アーク。

​拡散光の環水平アーク

点光源によって作られる、観測者・光源・氷晶の位置関係で大きく形を変える環水平アーク。

⇒ 2010_01_26-27 Complex Windshield Display①

Atmospheric optics, landscapes and more (Jari Luomanen's site)

グラウンド環水平アークと様々なグラウンドハロ。この写真では光源の上に環水平アークが出現している。

⇒ 2010_01_26-27 Complex Windshield Display②

Atmospheric optics, landscapes and more (Jari Luomanen's site)

グラウンド環天頂アークと様々なグラウンドハロ。この写真では光源の下に環水平アークが出現している。

外部解説リンク

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