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 タンジェントアーク

別名

 

英名

​ 

 

氷晶

配向

レア度

端接弧、外接ハロ

22°カラムアーク

tangent arc

circumscribed halo

22° column arc 

六角柱状氷晶、クラスター

カラム配向

★★★☆☆☆☆☆

​20~30回/年

概説

●タンジェントアークとは

 見た目は内暈の上下に接する虹色の弧(大抵は内側が赤、外側が白)であり、上の弧を上部タンジェントアーク、下の弧を下部タンジェントアークと呼び、光源高度が30~40°ほどになると両者が繋がり楕円形のハロ、外接ハロと呼ばれる形態になる。

 頻繁に観測でき、統計では年に20~30回程度は出現するとされ、季節に関わらず安定して現れる傾向がある。[1] ただし、鋭角な下部タンジェントアークは非常に貴重である。光源高度0°~30°までしか見られず、観測するには飛行機、ダイヤモンドダストの時でないと難しいためだ。

lower tangent loop.png

光源高度20°のときの下部タンジェントアーク。弧の両端は互いに近づきループを形成し、鋭い縦長の楕円形となる。また、弧の両端の付近には映日が見られる

⇒ Below Horizon Halos

Atmospheric Optics

飛行機からのループ状の下部タンジェントアーク

⇒ Alaska Halos

Atmospheric Optics

ダイヤモンドダストによるループ状の下部タンジェントアーク

 タンジェントアークを作るときの氷晶の姿勢ではラテラルアークも現れることがあるので、より外側(光源から視角46°付近の領域)にも注目すべきである。また、明るいタンジェントアークが現れた場合は、ラテラルアークだけではなくリーアーク幻日環映日アークウェゲナーアークなどの向日アークといったよりレアな現象も出現する可能性が高い。また、通常の太陽柱よりも長く伸びる「カラム配向の太陽柱」を作ることもある。

 昔の文献には、太陽の周りに明るい左右幻日と上下タンジェントアークが出現した記録として「5つの太陽」と称していることがある。

 タンジェントアークは数学用語のアークタンジェントと時々勘違いされます。それぞれ、「タンジェント:(内暈に)接する」+「アーク:弧」、「アーク:弧長」+「タンジェント:正接」という意味でまったく違う言葉ですが、大気光学において三角関数は非常に密接に関わっており、あながち無関係ではありません。

 

●原理

 六角柱状氷晶がc軸を水平にし、c軸・鉛直軸を中心に回転しているとき、氷晶の側面と一つ飛ばした側面とで形成される60°プリズムに光が通ることで生まれる。また、平面に広がったクラスター(角柱集合や砲弾集合等)が水平に浮かび回転している状態でもタンジェントアークが形成されると考えられる。

tangent lp.png

 氷で出来た60°プリズムを光が通過すると約50~22°曲がるが、特に約22°曲がる光が多い(「最小偏角が22°」という)。タンジェントアークを作る時の氷晶は多くがc軸を水平にしていることから、60°プリズムは主に垂直方向に光を屈折させることになり、太陽の上下22°離れたところに光の集積が生まれる。

 それに加え氷晶が鉛直軸を中心にも回転していることも考えなければならない。タンジェントアークの端は、光が六角柱状氷晶から見て斜めに通過することで生まれる部分である。傾斜のある面を斜めに通過するため水平方向にも屈折が起こり、また、六角柱の斜めの断面を考えると60°だったプリズム角が60°以上となっており最小偏角も22°以上となる。よって端は太陽から22°より離れることになり、弧の見た目になるのである。

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 また色の波長によって屈折率がわずかに異なり(=最小偏角も異なり)、可視光の内で赤色の光の最小偏角が最小の21.7°であることから、タンジェントアークは内側が赤色に見えるのである。ただしプリズムが分光させる方向と氷晶の回転方向が一致するため、分光した光は混じりあってしまい彩度は低い白っぽい見た目となることが多い。

●変形・出現光源高度

​ 光源高度に関わらず観測できるが、大きく形を変える。

上部タンジェントアーク

高度があがるにつれて徐々に開いていく。0°~10°あたりは鋭角のV字で、10°~30°あたりではM字→約30°以降は水平、更に開き太陽に凹となって下部と繋がり外接ハロとなる。

​下部タンジェントアーク

高度があがるにつれて徐々に閉じていく。0°~10°あたりは鋭角のΛ字で、約15°あたりで筆記体のⅬ(ℓ)のような見た目になる。限界を超えて閉じて右と左が入れ替わるようなイメージで、逆に開いていく。15°~30°あたりまでは鋭角のΛ字、それ以降は太陽に凸の弧を徐々にゆるやかにしていき、上部と繋がり外接ハロとなる。

​外接ハロ

30°~40°までは左右が垂れ下がったような楕円、それ以降は左右を長軸とした楕円となる。短軸は22°ハロと接しているため常に44°、長軸は光源高度45°で約60°、60°で約50°、と光源高度が高くなるにつれ正円に近づき22°ハロと区別が難しくなる。

 

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左:タンジェントアーク 中:パリ―アーク 右:両方 光源高度0-90° 10°刻み

[1]日本気象学会機関紙「天気」64巻(2017年)、鵜山義晃氏の「大気光学現象の出現頻度」によれば、太陽光では年23.1回、月光では年1.5回とされている。

​ 以下、他の有志の方々による統計

年20-30回(外接ハロは年15-25回) Arbeitskreis Meteore e.V.

年20回 空の輝き

年23.1回(外接ハロは年3.9回) 雪結晶・人工雪と過冷却水の実験

年23回 科学する空

関連

●外接ハロ

 光源高度30°~40°以上になると上部・下部タンジェントアークが繋がり楕円形となる。そのような形態ではもはやアーク(弧)とは呼べないため、22°ハロに外接する楕円という見た目から呼称が「外接ハロ」となる。タンジェントアークと外接ハロの境界に関しては、連続的で、主観的でもあるため明確な基準は無い。

 光源高度が高いときの外接ハロと22°ハロとの区別法は「鮮やかさ」だ。外接ハロは2軸回転、22°ハロは3軸回転のため、前者の方が分光の混じりが小さく少し鮮やかとなる。他にも「同伴する現象」でも区別は可能である。

​ 時に楕円ハロと呼ばれることもあるが、扁平ピラミッド型氷晶によって作られる楕円ハロと誤解を生むためあまり使用するべきではない。

 High sun halos

Atmospheric Optics

外接ハロ

⇒ High Sun Parry Arcs

Atmospheric Optics

外接ハロとパリ―アーク

●月のタンジェントアーク

 月の光で起きるタンジェントアークのこと

⇒ Lunar Halos Alaska North Slope

Atmospheric Optics

様々な月のハロ

⇒ Two Rare Lunar Halos

Atmospheric Optics

様々な月のハロ

⇒ Greenland Ice Cap Lunar Halos

Atmospheric Optics

様々な月のハロ

⇒ Lunar halo complex in Sotkamo, Finland

The Halo Vault

外接ハロと様々な月のハロ

⇒ Halo phenomena covering the sky - 10.12.2019 at 21.30 - 10.12.2019 at 21.45 Vimpeli

Taivaanvahti

外接ハロと様々な月のハロ

⇒ Halo phenomena covering the sky - 24.11.2020 at 21.10 Rovaniemi

Taivaanvahti

上部タンジェントアークと様々なのハロ

●グラウンド(サーフェス)ハロのタンジェントアーク

 地面や車の窓ガラス等の平面に浮かび上がるタンジェントアーク。

⇒ Pintahalo - 29.1.2012 klo 23.00 Espoo

Taivaanvahti

拡散光の様々なグラウンドハロ

⇒ 2010_01_26-27 Complex Windshield Display

Atmospheric optics, landscapes and more (Jari Luomanen's site)

拡散光の様々なグラウンドハロ

●拡散光のタンジェントアーク

 点光源によって作られる、観測者・光源・氷晶の位置関係で大きく形を変えるタンジェントアーク。光柱と供に現れると、光柱の先がV字に広がるような見た目となり、「フレア」「トランペットピラー」と呼ばれることがある。

⇒ Pillers with Flares

Atmospheric Optics

タンジェントアークを伴ったライトピラー

⇒ Pillers with Flares Part2

Atmospheric Optics

タンジェントアークを伴ったライトピラー

⇒ Divergent Light Pillers and Halos, Sweden

Atmospheric Optics

タンジェントアークを伴ったライトピラー

⇒ Angels Trumpets

Atmospheric Optics

タンジェントアークを伴ったライトピラー

⇒ Pintahalo - 29.1.2012 klo 23.00 Espoo

Taivaanvahti

拡散光の様々なグラウンドハ

⇒ Divergent light tangent arc on sparsely falling diamond dust

The Halo Vault

拡散光の下部タンジェントアーク

●幻日の上部タンジェントアーク

 多重散乱のハロの一種であり、幻日の光によって作られる上部タンジェントアークのこと。ボルレンゲアークとも呼ばれる。

​⇒詳しくはこちら

●上部タンジェントアークの上部タンジェントアーク

 多重散乱のハロの一種であり、上部タンジェントアークの光によって作られる上部タンジェントアークのこと。ヴォーコネンアークとも呼ばれる。

​⇒詳しくはこちら

●反射上部タンジェントアーク

​ 海面等に反射した太陽が光源となって出来る上部タンジェントアークのこと。

 モイラネンアークに似ているがシミュレーションで一致しない不明なアークが度々観測され、今までは反射型下部サンベックス型パリーアークと考えられてきていた。しかしそのアークを説明できる候補として反射上部タンジェントアークが新たに挙げられたのである。

 反射型下部サンベックス型パリーアークとは、弧の角度が少し広い、弧の中の光量が多い、といった違いがある。

⇒ A Swedish display points to a new halo

​The Halo Vault

​反射上部タンジェントアークについての考察。

​観測例

⇒ Swedish Ice Halos

Atmospheric Optics

極めて明るい上部タンジェントアーク

⇒ Sunset Tangent Arc

Atmospheric Optics

赤いタンジェントアークとカラム太陽柱

⇒ Parry & Upper Tangent Arcs

Atmospheric Optics

上部タンジェントアークと上部凸型パリ―アーク

⇒ 4 out of 5

Atmospheric Optics

上部タンジェントアークと上部凹型リ―アーク

⇒ Spain Diamond Dust Halos

Atmospheric Optics

下部タンジェントアークと下部凸型パリ―アーク

外部解説リンク

⇒ Atmospheric Optics 上部・下部 外接ハロ

⇒ Arbeitskreis Meteore e.V. 上部 下部 外接ハロ

⇒ 天空博物館 上部 下部 外接ハロ

⇒ 空の輝き

⇒ 雪結晶・人工雪と過冷却水の実験 上部 下部 外接ハロ

​⇒ あおぞらめいと 上部 下部 外接ハロ

​⇒ 科学する空

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