44°幻日
別名
英名
氷晶
配向
レア度
22°幻日の22°幻日
44° parhelia
★★★★★★☆☆
世界では1,2回/年
概説
●44°幻日とは
多重散乱ハロの一種であり、簡単に言えば22°幻日の22°幻日である。見た目は太陽と同じ高さで、視角44°離れた左右に現れる虹色(大抵は内側が赤、外側が白)である。
E. TränkleとRobert G. Greenlerのシミュレーションによると、44°幻日は二次散乱ハロの中で最も明るいとされ[1]、それもあってか多重散乱ハロの中で最も多く観測されている。ダイヤモンドダスト中、低い光源高度、非常に明るい22°幻日が出現したときに好発しやすく、注意して観測したい。
時にラテラルアークの断片と区別が困難なときもある。純粋なプレート配向のディスプレイであれば44°幻日の可能性が高い。
しばしば、44°幻日=外暈(46°ハロ)に対応した幻日と勘違いされることがある[2]が、これは誤りである。恐らくは22°幻日が内暈(22°ハロ)の左右に出現するように、44°幻日が46°ハロの左右(やや内側)に出現する見た目のため、そのような誤解が生まれたのだろう。
本来の「外暈(46°ハロ)に対応した幻日」は、そのメカニズムから考えると環天頂アークや環水平アークのことを指す。ちなみに、46°ハロの左右にスポットとして出現する現象としては、側方46°代替パリ―アークや単一の星型氷晶の多重散乱によるものが挙げられる。[3][4]
●歴史
1914年2月6日にアメリカのプエブロにて44°幻日と思われる観測記録があるが、撮影され、客観的な記録が残っている最初の観測は1970年12月3日のサスカトゥーンディスプレイである。
●出現頻度
世界(特に北欧)でみると1、2回/年の頻度で出現するとされ、とても稀な現象である。基本的にダイヤモンドダストによって生じるため地域差が大きく、日本では極めて稀(報告なし)である。[5]
●原理
光がプレート配向の六角板状氷晶の60°プリズムを通過することで22°幻日が形成された後、プレート配向の六角板状氷晶の60°プリズムを通過することで、22°幻日を光源とした22°幻日が形成されると考えられる。
●変形・出現光源高度
22°幻日が明るく形成される光源高度の範囲までは出現出来るが、基本は地平線付近のときのみである。光源高度が高いほど光源から離れていくと考えられる。
[1]
E. Tränkle and Robert G. Greenler 「Multiple-scattering effects in halo phenomena」 1987
[2]
実際、サスカトゥーンディスプレイを記した当時の文献などでも「44-46°幻日」の記載が見られる等、歴史的にも混同が見られている。
E. A. Ripley, B. Saugier 「PHOTOMETEORS AT SASKATOON ON 3 DECEMBER 1970」 1974
[3]
Jarmo Moilanena, Maria Gritsevich 「Light scattering by airborne ice crystals – An inventory of atmospheric halos」 2022
[5]
Günther P. Können 「Identification of Odd-Radius Halo Arcs and of 44 46 Parhelia by Their Inner-Edge Polarization」 1998
[4] Taivaanvahti
関連
●0°幻日
多重散乱ハロの一種であり、44°幻日とは反対に出るはずの、22°幻日の22°幻日のことである。44°幻日が出現しているとき、理論上は光源点にも同時に光の集積が起きているはずだが、識別は困難を極めるだろう。
ちなみに、同じように光源点に出来る、通常では識別が困難な現象として反射映日が挙げられる。
●66°幻日
多重散乱ハロの一種であり、44°幻日の22°幻日のことである。三次散乱(もしくは単一の星形氷晶の2回散乱→六角板状氷晶の二次散乱)による現象と考えられているが、文書のみでの記録であり真偽不明である。
⇒ PHOTOMETEORS AT SASKATOON ON 3 DECEMBER 1970
E. A. Ripley, B. Saugier による
⇒ UNUSUAL ARCS IN THE SASKATOON HALO DISPLAY
W. F. J. Evans, R. A. R. Tricker による
The Halo Vault
The Saskatoon displayについての解説
観測例
Atmospheric Optics
ダイヤモンドダストによるディスプレイ。44°幻日と46°ハロのずれを確認できる。
⇒ OPOD - Balloon Meet Halo Display
Atmospheric Optics
ダイヤモンドダストによるディスプレイ。44°幻日といくつかのハロ。
Atmospheric Optics
ダイヤモンドダストによるディスプレイ。44°幻日といくつかのハロ。
SUBMOON
サスカトゥーンディスプレイの写真。
⇒ Rare halos - 5.11.2019 at 12.45 - 5.11.2019 at 13.15 Salla
Taivaanvahti
ダイヤモンドダストによるディスプレイ。44°幻日といくつかのハロ。
⇒ Rare halos - 8.2.2017 at 11.47 Nurmes, Ellunkallio
Taivaanvahti
ダイヤモンドダストによるディスプレイ、光源高度10度近くとやや高い。44°幻日といくつかのハロ。
⇒ Halo phenomena covering the sky - 29.2.2016 at 08.15 - 29.2.2016 at 09.00 Nurmijärvi, Klaukkala
Taivaanvahti
ダイヤモンドダストによるディスプレイ。44°幻日、カーンアーク等が出現しサスカトゥーンディスプレイの再来を思わせる。
⇒ Harvinaisia halomuotoja - 5.1.2016 at 14.25 Helsinki
Taivaanvahti
飛行機上でのディスプレイ。44°幻日と46°ハロのずれを確認できる。