ブルースポット
別名
英名
氷晶
配向
レア度
blue spot
六角板状氷晶、六角柱状氷晶
プレート配向、パリー配向
★★★★★★☆☆
数年に1回
概説
●ブルースポットとは
見た目は幻日環上の青い領域で、120°幻日の周囲~向日までに出現する(理論上、映幻日環上、映120°幻日の周囲~対日にも出現しうるが認識は難しい)。ブルースポットは光源高度が低い時の幻日環に現れやすいため、低い幻日環が出現したときは色の変化が無いか注意して観測しよう。
ブルースポットを代表とする臨界角差によって生じる現象(詳細は下記「ブルースポットの原理」参照)は臨界角効果によるハロ(critical angle effect halos)と呼ばれることがある。
また、ブルースポットがランダム配向の時の姿がブルーサークルと考えられている。
理論上、ブルースポットは青色だけでなく緑色、赤色にも色づく可能性があるともされる。
Ice Crystal Halos
ブルースポットとブルーサークルの関係性
HALO REPORTS
ブルースポットの色について
●歴史
1990年代から、光源高度が低い幻日環に青い領域があることに気付かれ始めた。その後1994年4月21日、ヘルシンキでの大規模なディスプレイで初めて撮影されたと考えられている。
当初、ブルースポットはLiljequistの幻日に関連する現象と考えられていたが、現在では幻日環の主要光路1-3-2の特性と説明されている(ただしLiljequistの幻日自体にも似たメカニズムで青い領域が形成されることがある)。
●出現頻度
稀にしか観測されず、数年に1回程しか出現しないとされている。[1]
●原理
ブルースポットは、幻日環の主要光路1-3-2の全反射と部分反射の遷移の境目に出現する。[2]
※以降、分かりやすさのため光を赤色と青色の2種のみとして説明していく。
全反射から部分反射へ移行する角度である臨界角(正確には、その角度を超えると全反射する最小の入射角)は細かく見ると光の色ごとにわずかに異なり、赤色に比べ青色の臨界角が小さいことをまず念頭においてほしい。
空気の絶対屈折率 1.0 ≒ n air(赤) = n air(青)
氷の絶対屈折率 1.31 ≒ n ice(赤) < n ice(青)
氷→空気の臨界角 θc = arcsin ( n air / n ice ) のため θc(赤) > θc(青)
幻日環を作る氷晶の回転角は幻日環の方位角によって異なる。内部反射面(1-3-2における3の面)における入射角は幻日環の向日側に向かうにつれ小さくなっていき(下画像 左→中→右)、ある地点で臨界角に達することになる。更にその中でも色の臨界角差が存在する部分では、青色の光の臨界角が赤色のそれより小さいため、赤色が先に臨界角に達することになり、局所的に「赤色の光が部分反射、青色の光が全反射(下画像 中)」という状態となって、結果的に青色が優勢となって観測者に届くことになる。
蛇足かもしれないが、幻日環のブルースポットより光源側は「赤色の光が全反射、青色の光が全反射(下画像 左)」、ブルースポットより向日側は「赤色の光が部分反射、青色の光が部分反射(下画像 右)」となって観測者に届くため、何れも白色と認識することになり、前者によって作られた部分の幻日環は明るく、後者によって作られた部分の幻日環は暗くなる。
1-3-2の光路で、氷晶の回転角の変化による全反射と部分反射の遷移のイラスト。
●:上底面に入射する点 〇:下底面から射出する点
●変形・出現光源高度
ブルースポットは「対日中心の視半径約64°の円」と「幻日環(映幻日環)」との交点に出現するため、光源高度31、32°未満で観測することができる(ちなみに「対日中心の視半径約64°の円」はちょうどブルーサークルと同じである)。
光源高度0°では方位角約116°、光源高度31°では向日方向に長い線分として出現する。また、ブルースポットの幻日環上の出現開始方位角(°)は以下の式でおおよそが求められる。[2]
方位角 θ = 2 arcsin ( n cos ( arcsin ( 1 / n ))/ cos( e ))
n = 相対屈折率(氷/空気であれば約1.31) e = 光源高度(°)
氷晶が厚いほどよく観測できる。またプレート氷晶の揺れが大きいとブルースポットが斜めに伸び、言わばブルーサークルのなりかけのようなものが現れる。
[1] Taivaanvahti
[2] M. Sillanpää, J. Moilanen, M. Riikonen, and M. Pekkola 「Blue spot on the parhelic circle」 2001
[3] S. Borchardt and M. Selmke 「Intensity distribution of the parhelic circle and embedded parhelia at low solar elevations: theory and experiments」 2015
観測例
Atmospheric Optics
幻日環、120°幻日、ブルースポット
⇒ Be careful what you wish for!
Atmospheric Optics
マルチディスプレイハロ、記事の上から6画像目にブルースポット
⇒ Rare ice halo display, Sweden
Atmospheric Optics
ブルースポットを境に著明に幻日環の強度分布の差が出現するのが分かる
外部解説リンク
⇒ 空の輝き