9°ハロ
別名
英名
氷晶
配向
レア度
8°ハロ、8-9°ハロ
ファンバイセンのハロ
8° halo,8-9°halo,9° halo
Van Buijsen's halo
ピラミッド型氷晶
ランダム配向
★★★★☆☆☆☆
年に数回
概説
●9°ハロとは
ピラミダルハロ(pyramidal halos/odd radius halos)の一種で、見た目は光源を囲む、半径が視角9°の虹色(大抵は内側が赤、外側が白)の円である。ピラミダルハロの中では最小のハロで、最も現れやすく認知度も高い。ピラミダルハロには季節性があり主に夏に出現するという特徴があるが、例外的に9°ハロに関しては一年中見られるチャンスがあるとされる。[1]
視半径が9°ととても小さいことから、光源が太陽の場合は眩しさで撮影時に気付けず、その後写真を確認した際に初めて気付くこともしばしば。また、レンズフレアやオーレオールを9°ハロと間違われることが多い。目やカメラの保護に加え、カメラのアーティファクトを除去するという意味でも、9°ハロを疑った場合は光源を何かで遮蔽しながら撮影したり、いくつかの画角で撮影したりしよう。
9°ハロが見えるとき22°ハロが通常より幅広くなっていることが多く、それは23°ハロや24°ハロ等の併存及び散乱による融合と考えられる。逆にただ幅広い22°ハロが見えるときは、氷晶が小さいことによる散乱も考えられるため、9°ハロの存在の保証にはならない。(それでも一応幅広な22°ハロを見たときはピラミダルハロが出現していないか気にかけてみよう。)
9°ハロに9°プレートアークの成分が混じると上下が明るくなる。9°カラムアークの成分が混じると左右が明るくなる。
ちなみに揺れの大きい9°カラムアークの、光源高度が高いときの姿は9°ハロと瓜二つになるため間違われやすい。
ピラミダルプレートアークの成分が混ざったピラミダルハロのディスプレイ
ピラミダルカラムアークの成分が混じったピラミダルハロのディスプレイ
Q. そもそもなんでピラミッド(ピラミダル)って言うの?
A. ピラミッド型氷晶によって作られるから
稀に、大気中には通常の六角柱・六角板氷晶に六角錐台が付いたものが生まれることがあります。この錐台の部分があたかも「ピラミッド」のような形状であるから、そのような氷晶を「ピラミッド型氷晶」に呼称されるようになり、それによって出来るハロを「ピラミッド(ピラミダル)ハロ」と呼ばれるようになりました。
ただし海外では「odd radius halos(異常半径のハロ)」と呼ばれることが多い印象です。
⇒ Pyramid crystals and odd radius halos, part I
The Halo Vault
ピラミッド型氷晶の写真
どうしてこのような形状の氷晶が作られるのか、いまだにわかっていません。ちなみに、寒い地域に住む生物が持つ不凍タンパクが氷晶をピラミッド型に成長させるという事実が知られており、何か関係があるのかもしれませんね。
●歴史
1892年4月6日、オランダにてVan Buijsenによって初めて観測され、1973年にアメリカにてL. F. Radkenによって初めて写真を撮られた。ちなみにA. F. Piippoも1922年に撮影を試みたが失敗したとされる。
古い文献の9°ハロの呼称は、8°ハロ、8-9°ハロ、Van Buijsenのハロ等様々なものがある。
●出現頻度
比較的稀にしか観測されず、年に数回程しか出現しないとされている。[2] それでもピラミダルハロの中では最も頻繁に現れる。
9°ハロが現れやすい・見つけやすい理由として以下の4つが挙げられる。
①9°ハロはピラミダルハロの中で最も明るい。
●プリズム角が最小なので、光の損失及び分光具合も最小となるため。
●最小の範囲に光が投射されるので、単位面積あたりの光点の密度が高いため。
②半径が最小のため、ハロを形成するのに必要なピラミダル氷晶を含む雲の面積も最小で良い。
③視角18-24°のピラミダルハロの密集地帯から距離を取った所に現れるため見つけやすい。
④レンズフレアやオーレオールを9度ハロと間違われることが多く、これも報告数が多い理由の一つになってしまっている。
●原理
ピラミッド型氷晶がバラバラな向きで存在・回転しているとき、氷晶のピラミッド面と対側の側面とで形成される約28°プリズムに光が通ることで生まれる。
氷で出来た28°プリズムを光が通過する場合、最小偏角は約8.9°となる。
●変形・出現光源高度
光源高度に関わらず出現し、形状も変化しない。
[1] The 1790 St Petersburg Display Atmospheric Optics
[2] Tobias Lowitz 「Déscription d'un météore remarquable, observé à St. Pétersbourg le 18 Juin 1790」 発表1790、公開1794
関連
●月の9°ハロ
月の9°ハロは太陽によるものより珍しい。しかし、月は太陽より眩しくないため、9°ハロが出現した際は気づきやすい。
⇒ Lunar Pyramidal Crystal Halos, Chioggia near Venice
Atmospheric Optics
月のピラミダルハロ
⇒ Lunar Pyramidal Crystal Halos, Estonia
Atmospheric Optics
月のピラミダルハロ
⇒ Odd radius plate display from the Czech Republic
The Halo Vault
月のピラミダルハロとピラミダルプレートアーク
●9°グラウンドハロ
地面に氷晶が形成されることで生まれる、空ではなく平面に浮かび上がる9°ハロ。
⇒ Rare halos - 14.2.2021 at 11.27 - 14.2.2021 at 12.01 Rovaniemi
Taivaanvahti
22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
⇒ Rare halos - 13.2.2021 at 10.22 - 13.2.2021 at 11.03 Rovaniemi
Taivaanvahti
22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
⇒ Rare halos - 7.4.2012 at 08.00 Kontiolahti
⇒ Pintahalo - 7.4.2012 at 08.17 Kontiolahti
Taivaanvahti
18°、20°、22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
●9°カラムアーク(9°カラムハロ)
光源高度が高い時の9°カラムアークは9°ハロと形状が酷似しており判別が極めて難しい。これは光源高度が高い時の外接ハロが22°ハロと似ていることと同様の関係性である。
見分け方として、それが純粋な9°ハロであれば視半径9°、18°、20°、22°、23°、24°、35°、46°の8種の同心円状の現象が同時に出現しているのが典型的だ。9°カラムアークであれば視半径9°、20°(下部欠損)、22°、24°、35°(下部欠損)、46°(上部欠損)の円状の現象が出現しているのが典型的だ。
簡単に、18°、23°が欠落し、20°、22°、24°と等間隔に3つ並んだディスプレイを見たらピラミダルハロではなくピラミダルカラムアークを疑おう。
ピラミダル氷晶 ランダム配向
9°、18°、20°、22°、23°、24°、35°、46°
ピラミダル氷晶 カラム配向(揺れ std20°)
9°、20°、22°、24°、35°、46°
⇒ Some odd radius column displays from China in 2018
The Halo Vault
ピラミダルカラムアーク。2枚目の写真は特にピラミダルハロと区別が困難である。
⇒ Pyramidal Crystal Colunmn Arc Display
Atmospheric Optics
ピラミダルカラムアーク
観測例
Atmospheric Optics
9°、22°ハロ
Atmospheric Optics
9°、18°、20°、22°、23°、24°、35°ハロ
Atmospheric Optics
18°、20°、22°、23°、24°ハロ
Ice Crystal Halos
18°、22°ハロ
⇒ Odd radius column arcs from Joensuu
The Halo Vault
9°、18°、20°、22°、23°、24°、35°、46°ハロ
⇒ Odd Radius Halos in Diamond Dust
The Halo Vault
人工灯による9°、18°、20°、22°、23°、24°、35°、46°ハロ