ピラミダルハロ総論
●ピラミダルハロとは
稀に、大気中には通常の六角柱・六角板氷晶に六角錐台が付いたものが生まれることがある。この六角錐台の部分があたかも「ピラミッド」のような形状であるから(実際のピラミッドは四角錐だが)、そのような氷晶を「ピラミッド型(ピラミダル)氷晶」と呼ばれ、それによって出来るハロを「ピラミッド(ピラミダル)ハロ」と呼ばれるようになった。尚、海外では「odd radius halos(異常半径のハロ)」と呼ばれることが多い印象だ。
広義のピラミダルハロはピラミダル氷晶が生み出す全ての現象(狭義のピラミダルハロ、ピラミダルプレートアーク、ピラミダルカラムアーク、ピラミダルパリーアーク、ピラミダルローウィッツアーク、ピラミダルヘーリックアーク等)を指し、狭義のピラミダルハロは一般的な円状の現象を指す。
今でこそ、「9°ハロなどの特殊な半径のハロはピラミッド型氷晶によって生まれる」と簡単に説明されていますが、「特殊な半径のハロの成因となる氷晶はどのような形か」という疑問は、ピラミッド型氷晶という20面体と予想され、実際にその形の氷晶が観測されるまで、多くの科学者が長い年月をかけて挑み続けた難題でした。
●ピラミッド型氷晶とそれによって作られる現象
ピラミッド型氷晶は底面、側面(プリズム面)、ピラミッド面(側面から28.071°の傾斜)の三種の面を持ち、最大20面体となる。そのため通常の六角形氷晶(8面体)と比べると、面々が織り成す角度に60°や90°だけでない多くのバラエティが生まれ、様々な視角半径のハロを作り出すことが出来る。
大気と氷の屈折率を考えると、全反射をしない有効な屈折角(及びその最小偏角)は28°(9°)、52.4°(18°)、56°(20°)、60°(22°)、62°(23°)、63.8°(24°)、80.2°(35°)、90°(46°)である。
よってまとめると、ピラミダルハロは22°、46°の現象に加え6種(9°、18°、20°、23°、24°、35°)の現象が存在する。そしてこの6種の視角それぞれに対応した、幻日(プレートアーク)、タンジェントアーク(カラムアーク)、パリーアーク(未観測)、ローウィッツアーク(未観測)に相当する現象も存在することになる。
●ピラミダルハロディスプレイの実際
以上の通り、ピラミダルハロは種類も多く形状が複雑で、極めて理解が難しい印象を受けると思われる。実際、学問的にはかなり奥が深いが、観測されるピラミダルハロディスプレイは以下4種の典型像に当てはまることが多く、これらを把握することで比較的容易に氷晶配向の優位性を判別でき、精査の一助となるだろう。
①ランダム配向のピラミダルディスプレイ
最も基本であり、内側から視角9°、18°、20°、22°、23°、24°、35°、46°の同心円を認める。22~24°の密集地帯は一塊として認識されることもしばしば。
②光源高度が低い時のプレート配向のピラミダルディスプレイ
光源の近くは上下左右、遠くは斜め方向が明るく輝く像となる。
③光源高度が高い時のプレート配向のピラミダルディスプレイ
光源の左右で縦に伸びた18°プレートアーク、光源の上で蓋をするように横に伸びた23°プレートアークが目立ち、鳥居のような形となる。肉眼では錯覚的に「四角形のハロ」のように認識することもある。
*側面が発達していない14面体傾向が強い氷晶であれば、9°、22°、24°、46°は不明瞭となる
④光源高度が高い時のカラム配向のピラミダルディスプレイ
やや縦長の9°ハロに見える9°カラムアーク、その外側には20°・22°・24°と等間隔で現れ、下が欠損した35°カラムアーク、一番下には下部ラテラルアークが現れる。すべて円形に近いので通常のピラミダルハロと誤認されることも多い。