28°ハロ
別名
英名
氷晶
配向
レア度
28° halo
Scheiner's halo
八面体氷晶?
エキゾチック氷晶?
ランダム配向
★★★★★★★☆
全報告数 数例
概説
●28°ハロとは
エキゾチックハロの一種であり、見た目は光源を中心とした半径が視角28°の円で、Lascar displayの構成要素としても有名である。
グラウンドハロでは比較的頻繁に観測される。
●歴史
1629年3月20日ローマにて、天文学者であるChristoph Scheinerがスケッチしたものが最初の記録とされる。スケッチ内では22°ハロの外側に視角半径26-29°程のリングとして描かれている。
それ以降28°ハロは複数回報告されたもののどれも信頼性に欠けていたが、1997年11月27-28日にターニングポイントが訪れる。ラスカー火山(南緯23度22分、西経68度34分、チリのアンデス山脈真ん中に位置し標高5,592メートルの活火山)にて、Marco Riikonen、Leena Virta、Daniel Sullivanらが28°ハロの撮影に成功し、確かに存在するものと知らしめた。更に記録を詳しく分析した結果28°ハロだけでなく数多くの未知の現象も撮影されており、この一連の伝説的なディスプレイは「Lascar display」と、未知の現象群は「Lascar halo family」と呼ばれるようになった。[1]
●出現頻度
まだ数例しか観測されたことが無く極めて稀である。
●28°ハロの原理
28°ハロの原理は解明されていない。氷Icという特殊な状態の氷晶によるものや、エキゾチック氷晶と呼ばれる特殊な形状の氷晶によるものと考えられているが、どれも欠点がある。
「氷Icによる8面体氷晶」[2]
1981年にE. Whalleyが、28度ハロ(Sheiner's halo)の起源として氷Icの8面体氷晶の可能性があると提唱した(2000年にMarko Riikonenらはこの氷晶の切頂型と特殊な配向+通常のピラミッド型氷晶を組み合わせることでLascar displaysを再現した)。8面体氷晶は切頂が無ければプリズム角が全て70.5°で、最小偏角が約28°となるため、28°ハロの責任結晶の有力な候補として考えられている。
この説の欠点として、氷Icは温度約-90℃以下で形成される[3]が、巻層雲のある高度の気温は平均して-90℃をはるかに上回っている。[4] また、前述のとおり自然界、つまり大気から8面体の氷晶が見つかっていない(というより大気から採取する技術が無い)。アンデス山脈などの標高の高い山の周辺で観測されることから、地形的な影響が関係するのではないかとも考えられている。
氷は温度や圧力で異なる結晶構造を持ち、それは(多型)相と呼ばれ現在20種近く発見されています。我々が普段見る氷は氷Ih(六方晶系の対称性を持つ状態の氷、雪結晶が六角形なのからも実感しやすいですね)という相ですが、他に地球上で天然に存在し得る相として氷Ic(立方晶系の対称性を持つ状態の氷)があり、それは立方体及び8面体の氷を作り出します。
氷Icは実験室でしか作られておらず自然界ではまだ見つかっていません。28°ハロが氷Icによるものであれば、28°ハロの存在それ即ち自然界に氷Icが存在する証明となるため、大気光学の範疇を超えた関心が集まっています。
「傾斜の強い(20-23)のピラミッド面を持つ氷晶」[5]
2011年にNicolas A. Lefaudeuxらが提唱した。底面(面1)と対側の傾斜の強い(20-23)のピラミッド面(面43)で形成される70.4°のプリズム(最小偏角27.7°)、傾斜の強い(20-23)のピラミッド面(面33)と同側2つ隣の面(面35)で形成される70.7°のプリズム(最小偏角27.8°)、2つの光路で28°ハロが形成すると考えられている。
しかしこの説の欠点としても、このような角度を持つ氷晶が見つかっていないという点がある。
「2つの六角柱氷晶が70度に交差し結合した多結晶氷晶、及びその初期氷晶」[6]
1987年にAndrew J. Weinheimerらが提唱した。「2つの六角柱氷晶が交差し結合した多結晶氷晶の交差角(鋭角側)の頻度を調べると、交差角70度のところにピークが来た」という研究があり、「凍結し始めた段階では氷Icで、8面体(11面と13面かつ11面と22面が70.5度)になりかけたときに氷Ihに相転移し、8面体上に六角柱が成長する」という流れがあるのではないか考えられた。
「通常のピラミッド面{10-11}、傾斜が弱いピラミッド面{10-12}、二次ピラミッド面{11-21}の組合わさった特殊なピラミッド型氷晶」[7]
Alexander Haussmannが提案した。Bravaisの法則を踏まえ、Nicolas Lefaudeuxが提唱した「傾斜の強い{20-23}のピラミッド面を持つ氷晶」より形成されやすく、かつ5-6°・12-13°・28°の最小偏角を作り出す面の組み合わせを計算した結果、見つけ出されたものである。
しかし、このような形状の氷晶が実際に観測されたことがないこと、このような形の氷晶があるとするならば他にも様々な余計な現象が作られてしまうという欠点がある。
●変形・出現光源高度
詳細は不明だが、変形しないと考えられる。
[1] Lascar display
[2]
E. Whalley 「Scheiner's Halo: Evidence for Ice Ic in the Atmosphere」 1981
Marko Riikonen 「Halo observations provide evidence of airborne cubic ice in the Earth’s atmosphere」 2000
[3] 東京大学 乱れのない氷をつくる
[4] 気象庁 大気の構造と流れ
[5]
Nicolas A. Lefaudeux 「crystals of hexagonal ice with (20¯23) miller index faces explain exotic arcs in the lascar halo display」 2011
[6]
Weinheimer, Andrew J. 「Scheiner's Halo: Cubic Ice or Polycrystalline Hexagonal Ice?」 1987
[7]
A re-visited 13° halo observation from 2013, and some thoughts about the responsible crystal faces Halo Phenomena
●グラウンド(サーフェス)28°ハロ
地面に形成された氷晶によって浮かび上がる28°ハロで、空の28°ハロと比較すると頻繁に発生する。地面ということから氷晶サンプルの採取に期待されている。
⇒ A clear 28° halo on snow surface
The Halo Vault
18°、20°、22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
The Halo Vault
18°、20°、22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
⇒ Rare halos - 18.3.2021 at 08.33 - 18.3.2021 at 08.45 Rovaniemi
Taivaanvahti
22°、28°、46°グラウンドハロ
⇒ Rare halos - 14.2.2021 at 11.27 - 14.2.2021 at 12.01 Rovaniemi
Taivaanvahti
22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
⇒ Rare halos - 13.2.2021 at 10.22 - 13.2.2021 at 11.03 Rovaniemi
Taivaanvahti
22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
⇒ Rare halos - 7.4.2012 at 08.00 Kontiolahti
⇒ Pintahalo - 7.4.2012 at 08.17 Kontiolahti
Taivaanvahti
18°、20°、22°、23°、24°、28°、35°、46°グラウンドハロ
観測例
Ice Crystal Halos
Lascar displayについて
⇒ Rare halos - 5.3.2022 at 09.00 - 5.3.2022 at 14.18 Kouvola
Taivaanvahti
13°ハロ、28°ハロと様々なハロ
⇒ Rare halos - 2.9.2021 at 13.20 - 2.9.2021 at 16.30 Juva
⇒ Rare halos - 2.9.2021 at 09.18 - 2.9.2021 at 16.14 Kouvola
Taivaanvahti
13°ハロ、28°ハロと様々なハロ
⇒ Rare halos - 24.5.2020 at 19.25 - 24.5.2020 at 20.45 Reading, Iso-Britannia
Taivaanvahti
28°ハロと28°上部側方アークと様々なハロ