ボトリンガーリング
別名
英名
氷晶
配向
レア度
ボトリンガーのハロ
ボトリンガーの輪
Bottlinger's ring
Bottlinger's halo
平たいピラミッド型氷晶?
樹枝状雪結晶?
プレート配向
★★★★★★☆☆
地平線下を観測できる時のみ
概説
ボトリンガーリングは楕円ハロに似た特異な性質がある。
①極めて小さい
楕円ハロと同様、視半径は通常のハロに比べて大変小さい。しかしその中心は太陽よりも数段暗い映日であることから、光量で潰されて見逃すようなことは無いだろう。
②出現時間が短い
出現時間は楕円ハロよりも更に短く数秒~数十秒。これは責任結晶の存在する領域が狭いことに加え、大抵は飛行機下からの観測であることから、その領域を素早く通過してしまうためである。
しかしながら例外もある。最初の記録とされるBottlingerの報告では1時間から1時間半であった。飛行機とは違うその場に留まるという気球の性質上ボトリンガーリングとの相性が良く、長く観測できたのだろう。[1] また、ダイヤモンドダストによるボトリンガーリングもかなり長命なことがある。[2]
③活発な形状変化
視半径が活発に変化することがある。
④局所的出現
ボトリンガーリングは狭い範囲でしか観測されない。[3]
⑤母雲は高積雲、層積雲、層雲
通常のハロは巻層雲によって形成されるが、ボトリンガーリングも楕円ハロ同様高積雲、層積雲、層雲によって形成されることが知られている。[3]
⑥映日を伴う
ボトリンガーリングは確実に映日を伴うといっていい。これはボトリンガーリングがプレート配向によって起きるとされることから容易に想像がつく。
⑦楕円ハロとの関係
楕円ハロの項にも記述しているため詳細は省く。
●歴史
ボトリンガーリングの最初の記録とされているものは、1909年3月13日、ドイツのゲッティンゲンにてC. F. Bottlingerが熱気球上で観測したものである。[1]
●出現頻度
不明である。稀にしか観測できないことは確かであり、特殊なシチュエーションも要求されることから数年に1回程度と考えて良いだろう。
●原理
楕円ハロの原理は未だ解明されていない。後述の通りいくつかの説があるが、このサイトでは最も有力と考えられている平たいピラミッド面を持つ結晶によるものとしている。ちなみにこの説は、1960年にオランダのS. W. Visserが楕円ハロを説明するために提唱したものであり、1999年にSillanpääがボトリンガーリングに拡張させた。[4]
責任結晶は楕円ハロと同様、氷晶というより初期の樹枝状雪結晶等が有力な候補として挙げられている。実際にダイヤモンドダストによるボトリンガーリングが出現したときのサンプルでも樹枝状結晶が認められている。[2][4] また記録から、-15~-16℃[2][3]や-12~-8℃[5]付近の気温で責任結晶が形成されると考えられている。
他の説は以下の通りである。
「振り子運動をしながら落下する氷晶による反射・散乱」[1]
1910年にBottlinger自身が提唱したもの。水平の姿勢で回転し、更にゆらゆらと振り子のように動きながら落下していく氷晶の反射や散乱によって形成されるという仮説。尚、この説で楕円ハロを説明するには映日が光源となる多重散乱が必要である。
ただしこれはLynchらのコンピュータシミュレーションで、リングではなく均一な楕円の光になることが判明した。[6]
「旋回運動をしながら落下する氷晶による反射・散乱」[6]
1994年にLynchらによって上記の説を改良したもの。振り子の動きではなく、一定の角度で螺旋を描くように旋回しながら落下していく氷晶の反射や散乱によって形成されるという仮説。しかし雲の中で結晶が全て同じ傾斜角で旋回するというのは現実的ではなく、更に多重のボトリンガーリングを作るには、一定の傾斜角を持つ結晶集団が複数必要となる。
尚、この説でも楕円ハロを説明するには映日が光源となる多重散乱が必要である。
「旋回運動をしながら落下する雪結晶による反射・散乱」[3]
1996年にTränkleらによって上記の説を改良したもの。一定の角度で螺旋を描くように旋回しながら落下していく雪結晶の反射や散乱によって形成されるという仮説。雪結晶であれば空気力学的に旋回運動をしやすく、シミュレーションも今までのボトリンガーリングの写真とよく合致した。
しかし、多重のボトリンガーリングの説明、楕円ハロの説明が以前の説と同様に難しい条件が必要となる。
●変形・出現光源高度
光源高度が高い時は真円に近く、光源高度が低い時は縦長の楕円(光源位置は楕円の中心ではなく下方に離心する)、更に低い時は楕円の下部が離れU字となり、地平線付近では下部も離れ湾曲した柱状になると考えられる。
[1] C. F. Bottlinger 「Über eine interessante optische erscheinung beieiner ballon fahrt (An interesting phenomenon seen during a balloontrip),Meteorologische Zeitschrift」 1910
[2]
New halo in elliptical halo / Bottlinger family
Streelight Bottlinger in Kangasala on 9/10 January 2010
[3] E. Tränkle and M. Riikonen 「Elliptical halos, Bottlinger’s rings, and theice-plate snow-star transition」 1996
[4] M. Sillanpää 「Unusual pyramidal ice in the atmosphere as the origin of elliptical halos」 1999
[5] J. A Shaw「Inflight observation of Bottlinger’s rings」 2017
[6] D. K. Lynch 「Subsuns, Bottlinger’srings, and elliptical halos」 1994
観測例
Atmospheric Optics
多重のボトリンガーリングと映日。頂角177~179°のピラミッド型氷晶で再現された
The Halo Vault
ボトリンガーリングと映日
⇒ Bottlinger's Rings from airplane
The Halo Vault
ボトリンガーリングと映日
SUBMOON
ボトリンガーリングとその考察
⇒ Taivaanvahti - Ursan havaintojärjestelmä: Havainnon tiedot
Taivaanvahti
ダイヤモンドダストによる太陽柱とボトリンガーリング
他の形態
●月のボトリンガーリング
楕円ハロは月で見られやすいがボトリンガーリングはそうはいかない。そもそも映月の時点で様々な条件をクリアしないと観測できないため、月光のボトリンガーリングの観測は極めて難しいだろう。
●拡散光のボトリンガーリング
街灯から伸びる鋭角なV字の光が拡散光のボトリンガーリングであり、通常のボトリンガーリングの形状とは大きくかけ離れている。同じく街灯から鉛直に伸びるライトピラーと合わせて3爪のフォーク状に見える。-15~-16℃のダイヤモンドダストの中、約200㎡の範囲で数時間出現し続けたという。正確には、上方に伸びるV字が拡散光ならではの光路によって形成される超ボトリンガーリング、下方に伸びるV字が通常の光路によって形成されるボトリンガーリングである。
へーリックアークの概念を拡張させて、「結晶のx°傾いた面の外反射によって形成される、光源を貫くアーク」をx°へーリックアークと呼ぶことにすると、このボトリンガーリングは8°へーリックアークと呼べるようになるという。[7] この考え方では、通常のへーリックアークはパリー氷晶の60°傾斜した面に反射することで形成されるため60°へーリックアーク、ピラミダルへーリックアークは62°へーリックアーク、幻日環は90°へーリックアーク、上部・下部太陽柱は0°へーリックアークと呼べる。
⇒ New halo in elliptical halo / Bottlinger family
Ice Crystals Halos
拡散光のボトリンガーリング
⇒ New halo in elliptical halo / Bottlinger family Part II
Ice Crystals Halos
拡散光のボトリンガーリング
⇒ Streelight Bottlinger in Kangasala on 9/10 January 2010
SUBMOON
拡散光のボトリンガーリング、雪結晶のサンプル
[7] W. Tape 「Streetlight Halos」 2010